各社の株主総会がピークを迎えています。
そんな中、大阪証券取引所の株主総会のニュースが、WBSで取り上げられていました。
そこにあの人、村上ファンドの村上氏が筆頭株主で出席していました。
彼は、物を言う株主の立場から、
「株式を公開している以上、株主価値を上げるために、前年4000円だった配当を2万円にしろ」
と主張したことが紹介されました。
しかし、これを聞いて、私はいささか混乱いたしました。
配当の増減は株主価値の増減とは全く関係ないのだが・・・?
株主価値の定義は、
「株主価値 = 企業価値 - 将来の支払い(負債)」であり、
「企業価値 = 営業資産の時価 + 非営業資産の時価」
「営業資産の時価 = 将来にわたって生み出されるキャッシュフローの割引現在価値」
です。つまり、
「株主価値 = 将来キャッシュフローの割引現在価値 + 非営業資産の時価 - 将来の支払い(負債)」
ということになります。配当を増やしても、キャッシュフローには直接影響しませんし、非営業資産が増えたり減ったりもしません。それどころか、必要な投資をしたり、負債の返済よりも配当を優先するならば、株主価値は減少してしまいます。
もっと砕けて言うなら、会社のオーナーは株主なので、配当を増やして会社の金を外に持ち出そうが、会社の中に留保しておこうが、オーナーとしては関係ない話です。
というわけで、村上氏の発言に混乱を覚えてしまった次第です。
ところが、ネットで調べてみると、株主価値の計算には配当還元方式というものもあることがわかりました。
配当還元方式は、株主が受け取る配当というリターンに着目して、企業の株価を評価する方式です。この方式は、対象とする配当金額の捉え方等の相違により、実際配当還元法、標準配当還元法、ゴードンモデル法等があります。
この方式は、評価が比較的簡単であるというメリットがあります。また、実務的には、少数株主は比較的配当を重視する傾向にあることから、少数株主が保有する株式の評価には優れているといえます。
しかし、この方式は、配当以外の収益力や資産価値を全く考慮していない点や、無配企業には適用できない点等の問題もあるため、少数株主が保有する株式で、かつ、安定した配当が見込まれる株式の評価以外では、この方式のみで評価を行うのは適切でないと思われます。
「あの」村上氏が、「この方式のみで評価を行うのは適切ではない」やり方で「株主価値向上」を主張しているとしているのでしょうか。それはそれで問題だけど、そのことについて指摘がないマスコミもどうかと思います。
本当は、村上氏はこう主張すべきだったのではないでしょうか。
「一株当たりの株主価値から計算される理論株価に比べ、株価が低すぎるので改善してほしい。」
たしか、ニッポン放送株については、昔からそのように言われていたので、村上氏自身も同様の発言をしていたかもしれません。
さて、上記の目的のための手段の一つとして、配当は有効です。株主価値自体を向上するのではなく、株価を向上させますから。また、他にも手段があります。有望な分野への投資や、自社株買いによる株数の減少です。これらは、直接的に一株当たりの株主価値を向上させることができます。
要は、他にも手段があるのに、配当にこだわりすぎる必要はないのではないか、ということです。
実のところ、配当は税金の二重払いの性格があるので、私は良い策とは思いません。というのも、会社が法人税等の納税を行った後の純利益を配当すると、受け取った株主はさらに20%(人によってはそれ以上)の税金を治めることになるからです。
税金が入る国にとっては美味しいのかもしれませんが。